豆腐の製造過程

一般的な豆腐の製造工程
精選

割豆、破砕豆、虫喰豆、他の種子類、異物などの夾雑物を取り除きます。

洗浄

大豆の表面に付着している土ほこりなどを十分取り除くために、水洗いを何回も繰り返します。

浸漬

次の工程の大豆磨砕をし易くするために、水に漬けます。漬ける時間は、水温・気温等によって異なりますので、神経を使います。特に夏と冬では、浸漬時間の差が大きくなります。

磨砕

浸漬し水分を含んで大きくなった大豆を細かく砕きます。昔は石臼で挽いていましたが、現在はグラインダーが一般に用いられています。 磨砕は、大豆の細胞を破りタンパク質等の成分の抽出に役立ちます。磨砕は注水しながら行い、加水量によって豆乳の濃度を加減します。

生呉
(煮呉)

磨砕したものを呉といいます。次の工程で加熱したものを煮呉といいますが、対比して加熱していないものが生呉です。 昔、家庭で大豆を水に浸しすりつぶし煮たものを呉汁といいましたが、同じような工程といえるでしょう。

加熱

生呉を加熱します。加熱は、大豆タンパク質を凝固しやすく、最大に抽出させるために行います。豆腐にしたときのタンパク分子の網の目が細かくなり、水分をしっかり取り込めるため柔らかい仕上がりとなる利点があります。昔は、呉を釜(地釜)に入れ直火で加熱していましたが、現在はボイラーによる蒸気加熱が主流です。加熱温度は100℃前後です。

搾り

濾過、分離などともいいますが、加熱した呉(煮呉)を「豆乳」と「オカラ」に分離する工程・作業です。 昔は、煮呉を布袋に入れ、手作業で絞る重労働でしたが、現在は機械化が進んでおります。


※生絞り:煮呉ではなく生呉を絞り、その後加熱する製法があり、中国では今でもこの「生絞り」が一般的ですが、日本でも沖縄の「しま豆腐」はこの方法です。大豆のえぐみが出にくいという利点があります。本土では現在一般に用いられていません。

豆乳

上のような工程を経て「豆乳」が生み出されます。この豆乳から、各種の豆腐製品が製造されるのです。そのため豆腐製品の種類に応じた豆乳が造られております。

豆腐の添加物
凝固剤

豆乳から豆腐を作る次の工程「凝固」のための添加物で、豆腐の味や食感を左右する豆腐製造には不可欠なものです。タンパク質は主としてカルシウムやマグネシウムなど「金属(イオン)塩」と反応して凝固する場合と「酸」による凝固があり、それぞれの特性を活かし豆腐製造にも主としてこの2種類の凝固方法が使用されております。なお、凝固剤にはそれぞれ特質があり、豆腐の種類・用途や好みに応じて使い分けたり、複数を混合して使用されることもあります。豆腐用の凝固剤として食品衛生法で指定されているものは次の凝固剤です。


◎塩化マグネシウム・粗製海水塩化マグネシウム(別名:塩化マグネシウム含有物)
いずれも「にがり」といわれるもので、昔から豆腐はにがりで造られてきました。第二次世界大戦中に軍需物資(飛行機製造のためのジュラルミンの原料)として調達されたのを契機に、その使用は大きく減少しましたが、最近では自然志向やグルメ志向から使用が増加しております。その特性を活かした「塩け」により大豆の甘味や旨味を引き出すほか、海水にがりには独特の「旨苦さ」があり、大豆本来の味を強調した豆腐作りに適しています。凝縮感のある仕上がりとなる半面、保水力が弱いことから木綿豆腐の製造に向いておりますが、水に溶けやすく凝固反応が速い(数秒でジェル状になる)ため、扱いには技術を要します。「にがり」は、海水から塩化ナトリウムと塩化カリウムを分離し濃縮・精製された個体(かたまり状・フレーク状・粉状・粉体状=塩化マグネシウム)と、海水から塩(塩化ナトリウム)を採ったあとに残る液体のもの(海水にがり=粗製海水塩化マグネシウム)などがあります。いずれも「にがり」として付記表示が認められております。


◎硫酸カルシウム(澄まし粉)
中国では古くからにがり同様、凝固剤として使用されており、日本では、にがりが調達されたことにより、その代替品として広く使用されるようになりました。石膏を精製したもので天然と化学合成品があり、特性として水に溶けにくくにがりよりも凝固反応が遅い(ジェル状になるまで数分を要する)ため扱いやすく、保水力が強いので絹ごし豆腐に向いており、舌触りがよく滑らかで弾力があり、淡泊でクセのない豆腐に仕上がります。


◎塩化カルシウム
にがりよりも凝固反応が速く水に溶けやすく、固い豆腐ができる特性があり、主に油揚や凍り豆腐用に用いられます。


◎硫酸マグネシウム
にがりと同じように凝固速度が速く扱いにくい上、にがりほど味の点で特長がでないため、単独で使われることはほとんどありません。この成分は海水にがりも含まれており、にがりや澄まし粉との配合剤として使われることがあります。


◎グルコノデルタラクトン
澱粉を原料として発酵法により作られたものです。水に溶けグルコン酸となって酸凝固するもので、ハムなどの乳化剤としても使用されています。親水性があり豆乳に均一に溶け、澄まし粉よりもさらにゆっくりと水を抱き込みながら凝固するため保水性に富んだ豆腐ができます。凝固の速度が遅く、凝固適正温度が高いため、かつpHが下がるため細菌の増殖が抑制され日持ちのする豆腐となり、機械による製造に向いている面があり充填豆腐などに多く用いられています。


◎葛粉(くず粉)等
まれではありますが、葛粉を使用した豆腐もあります。マメ科のつる性多年草の根より採取した澱粉を精製したもので、澱粉の糊化を利用し凝固します。呉豆腐(ごどうふ)やごま豆腐、ピーナッツ豆腐の他、豆腐にも用いられています。また、ジーマーミ豆腐はサツマイモの澱粉を使用しています。100%天然のものを「本葛粉」と言い生産量が少なく高価なため、ジャガイモやサツマイモ、コーンスターチなどを混合したものも多く見られます。


消泡剤

砕いた(磨砕)大豆(生呉)を加熱すると、大豆サポニンの作用により泡が生じます。この泡を消すために使用します。泡があると、食感のよい均一できれいな豆腐に仕上がらなく、日持ちも悪くなります。消泡剤には、大別して次の3種類が用いられております


◎油脂系消泡剤
パーム油・菜種油・大豆油など植物由来の油脂・硬化油に炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムなどを混合し均質化したものです。


◎グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセライド)
食用油脂とグリセリンを反応させて造ったもので、乳化剤として広く用いられているものです。


◎シリコーン樹脂
自然界に広く存在する珪石(けいせき)を構成する珪素が主成分です。

これらの消泡剤は、目的に応じて広く使用されていますが(「消泡剤不使用」の製品もあります)、食品衛生法では、加工中に消滅または最終食品に残っていても微量な「加工助剤」として扱われています。