豆腐の種類

豆腐
木綿豆腐

木綿豆腐は最も一般的な昔からの豆腐です。製法は、先ず豆乳を凝固させることから始まります。


◎凝固
絞った豆乳を凝固器(寄せ桶)に注入し→温度があまり下がらないうちに凝固剤を入れ→凝固剤が均一に行き渡るように撹拌する→一定時間をおくと凝固してきます。

※この一連の作業は、成分を集める意味から「寄せる」といっています。
※カイ:撹拌や次の崩しに用いる用具のことで、昔からの呼び名。船の櫂と同名です。


◎崩し
豆腐状に凝固したものを用具を用いて「くずし」ます。これは、豆腐に取り込まれなかった水分や油分(上澄み=「ゆ」という)を分けやすくすることと、次の工程の型箱にきちんと入れやすくするためです。


◎型入れ・圧搾
上澄みを取った凝固物をひしゃくなどで型箱に盛り込みます。型箱は孔があいたものを用い、箱の中に布を引いておき、凝固物をほぼ一杯に入れて布を覆い、蓋をして、上から重しを乗せ圧力を加えます。これにより、箱の穴から「ゆ」が出て、キッチリとした豆腐が形作られ(成型)ます。


◎型出し・水晒し・カット
型箱の中で成型された凝固物(豆腐)を、水槽に取り出し、水晒しを行い、一定の大きさに切り分け(カット)し、木綿豆腐ができあがります。 その後、通常は、日持ちを良くするため水槽の中で豆腐の芯まで冷却(そのまま、または包装して)し、冷蔵庫に保管、出荷という運びとなります。 なお、工程のなかの水晒しは、製品を冷やすと同時に、余分な凝固剤や「アク」などを除くために行うものです。また、工程のなかで他の豆腐と異なる点は、重しで圧搾し「ゆ」を出すことですが、それにより量目当りのタンパク質の割合が高くなっています。


※木綿豆腐の名称:型箱の中に木綿の布を引いていたため、豆腐の表面にその布目が付いていたことに由来しています。

ソフト豆腐

木綿豆腐の工程中、あまり崩しを行わないで、かつ、圧搾を少なくし、「ゆ」をあまり取らないで仕上げた豆腐です。 木綿豆腐と絹ごし豆腐の中間の柔らかさと滑らかさをもち、木綿豆腐同様のしっかりとした特徴があります。最近の「柔らかさ」指向に応じて、このような仕上げが増えていますが、木綿豆腐の一種ですので、特に表示をしない場合が一般的です。なお、製法としては他に、絹ごし豆腐用の型箱で凝固させた後、木綿用の型箱に移し、押しをして仕上げる方法や、木綿用の型箱にビニールを敷き、絹ごし状に凝固させた後、ビニールを抜きとり、押しをして仕上げる方法などもあります。

寄せ豆腐
(おぼろ豆腐・
ざる豆腐)

木綿豆腐の工程中、型箱に入れる前の「寄せた状態」のものを器に盛って製品としたものです。 寄せたままの豆腐という意味で「寄せ豆腐」と称したものと思われます。型箱での圧搾や晒しをしないので、木綿豆腐とは一味違った食感・風味が得られます。別名の「おぼろ豆腐」は、おぼろ月夜のもやもやとした状態に似ているからといわれています。昔は、近隣の方などが持参した容器に盛って販売していましたが、最近はプラスチック容器の普及等により広範に売られるようになりました。また、この「寄せた状態」のものをザルに盛ったものが「ざる豆腐」です。 ザルから自然と「ゆ」が出て、これも木綿豆腐とは一味違った食感・風味です。


絹ごし豆腐

この豆腐は、ご承知のように柔らかで滑らかな豆腐です。そのため製法も、木綿豆腐のように寄せ桶のなかでの撹拌・崩しや型箱での圧搾を行わず、「ゆ」を取ることをしません。凝固剤を入れた穴のない布を引かない型箱に熱い豆乳を流し込み、均一に混ぜ、一定の時間静置しておき固めます。 その後の型出し、水晒し等は、木綿豆腐と同様に行います。圧搾や「ゆ」取りをしないため、濃い豆乳を用い形作りを図っています。なお、絹ごし豆腐は、豆乳を全部凝固させるものですが、保水力のある凝固剤・澄まし粉(硫酸カルシウム)や、その後開発されたグルコノデルタラクトンの出現により製造しやすくなりました。 そのため、戦後になって今日のように普及をみておりますが、最近ではにがり(塩化マグネシウム、粗製海水塩化マグネシウム)を用いた製法も普及しております。


※絹ごし豆腐の名称: 絹のように、あるいは絹の布で漉したように、なめらかな口当たりや、キメ細かい肌目にちなんだもので、絹の布で漉しているわけではありません。

充填豆腐

絹ごし豆腐と同様に、なめらかさがあり、充填絹ごし豆腐とも称しています。製法は、豆乳を一旦冷却し、凝固剤と一緒に1丁ずつの容器に注入(充填)・密閉し、加熱して凝固させます。豆乳を冷やすのは、熱いとすぐに凝固し容器への充填に不便なためです。型箱に入れない、水晒しをしないのも特徴ですが、1丁ずつカット(切断)しないので、この充填豆腐と対比して、他の豆腐をカット豆腐ともいっています。以前は、袋入りのソーセージ状のものやブロー成型容器(ポリエチレン製)を用いたことがありますが、今は一般豆腐と同様な角型が普通です。この豆腐の製法は戦後機械化の進展等に伴い生まれたもので、大量生産に適しております。また、豆乳を充填・容器密閉後、加熱凝固、殺菌が行われるため、日持ちの良いのも特徴です。

豆腐加工品
焼き豆腐

焼き豆腐は、木綿豆腐やソフト木綿豆腐を水切りしてから、炭火やガスなどで焼いて焼き目を付けたものです。崩れにくく、味がしみやすいため、すき焼きや煮物、田楽(でんがく)などに多く使われます。

油揚げ

いなり寿司(きつね寿司)や煮物、味噌汁の具材、惣菜など広く用いられる油揚げもまた、地域によって製法や製品の形(西の三角・四角、東の長方形といわれます)、食感が異なり豆腐同様に多種多彩です。名称も関西では薄揚げと呼ばれ、手揚げ、機械揚げ(自動揚げ機で連続的に製造)、稲荷揚げ(いなり寿司用に中を開いたもの)などの業界用語があります。油揚げに関しては資料が少なく、我が国の文献に記述されるのは15世紀頃で「天ぷら」に代表される揚げ物料理が登場するのは1560年頃です。江戸時代に出版された「豆腐百珍」及びその続編には豆腐を揚げた料理が掲載されており、広く普及していたことがうかがわれます。油揚げは大豆のたんぱく質を膨張させるため油揚げ生地の水切りをしっかり行い、揚げることにより油中で褐変を起こし、豆腐とはまた異なった香ばしく独特な風味・食感が生まれます。「揚げ」の技術は「脱水」の技術でもあり旨みを凝縮させる効果があります。


一般的な油揚げの製造工程
木綿豆腐より濃度の薄い豆乳を木綿豆腐同様に凝固、圧搾、水切りし、成型した薄い油揚げ用の生地から作ります。この生地を、110℃前後の低温の食用油(菜種油や大豆油が多く使用されています)で、容積約6倍ほどに膨張(のばし)させ、160℃前後の高温の油で張りをもたせる(からし)ため二度揚げします。機械揚げは油中式のものでは袋状になりやすく、「寿司揚げ」や「出し揚げ」といわれます。手揚げは2槽の温度の異なるフライヤーを使用し、箸や網を用いて作られ、油に浮いた状態のため「浮かし揚げ」とも呼ばれ、製品の形状が舟型に反っています。

厚揚げ
(生揚げ)

厚揚げ (生揚げ)は、木綿豆腐やソフト豆腐、絹ごし豆腐をよく水切りし、170℃前後の食用油(前述)で揚げたものです。

ひろうす
(がんもどき)

ひろうす (がんもどき)は、木綿豆腐を細かく崩して脱水し、つなぎに山芋やにんじん、ごぼう、昆布などの具材を入れて混練し、丸やだ円に成型したのち、90~110℃前後の「のばし」と140~160℃前後の「からし」の食用油(前述)で二度揚げしたもの。


※ひろうす (がんもどき)の名称: その味が、雁の肉に似ているからという説です。戒律の厳しい当時の僧侶たちの肉食へのあこがれが想像されます。 ひろうすは、ポルトガルの菓子「フィリオース」の製法に似ているから、あるいはその製法を借りたから、すなわちポルトガル語に由来するとの説です。また、形が竜の頭に似ている(飛竜頭)からとの説、その他の説もあります。

関連製品
オカラ

煮た呉から豆乳を絞った残渣がオカラです。室町時代には、雪花菜(きらず:切らずに食べられることの意)や豆渣(とうさ)の名称で記述されています。オカラには、大豆由来の豊富なタンパク質や食物繊維(オカラにはレタスの10倍・サツマイモの3倍・ゴボウの2倍の食物繊維が含まれています)の他、微量栄養成分、脂肪分が含まれており、昔から食用として供されてきました。食事からの不溶性食物繊維の摂取量が減少傾向にあることや、腸内の胆汁酸の吸着や肝臓に蓄積されたコレステロールを消費すること、腸内のビフィズス菌を生成するオリゴ糖を生成することなどから、近年、その有用性に脚光を浴びております。「卯の花」等を筆頭に、最近ではハンバーグ等の具材、菓子やパンの生地の材料など、エコブームや乾燥オカラの製品化も相まって有効利用が着目されております。また、高騰している輸入飼料・肥料の代替品としても注目されており、オカラの多くは廃棄物として処理されており、さらなる利・活用が期待されております。


豆乳

豆腐製品ではありませんが、大豆から水で溶解する成分を抽出した乳白色の液で、豆腐製品の製造に重要不可欠な「母液」です。発祥地・中国では結構飲まれておりますが、わが国でも栄養に着目し豆乳が注目され、度々ブームが到来しております。現在、市販されているのは、豆乳(無調整)と、甘味などの調味料等を加えた調整豆乳とがあります。

ゆば
(湯葉)

ゆばも豆腐製品ではなく、豆乳から採れる製品、その点では兄弟製品ともいえます。製法は、豆乳を加熱すると表面に薄い膜が生じますが、これを竹串で引き上げたものが「生ゆば」・「引き上げゆば」で、そのまま料理に用います。一般には、乾燥したものが市販されています。京都や日光が有名ですが、栄養面はタンパク質と油脂分に富んでおり、乾燥品は保存食品でもあります。

凍り豆腐

木綿豆腐を凍らせた後、乾燥させて造ります。栄養価の高い保存食品でもありますが、長野県が圧倒的な生産高を占めています。名称は、高野山の宿坊で作り始めたということで「高野豆腐」、信州辺りは凍みるの意で「凍み豆腐」といわれています。 なお、豆腐製造業者は本製品を作らず、専業メーカーにより製造されています。

古来豆腐・珍品・新製品
六浄豆腐

食塩で豆腐から水を抜き、乾燥させ、削って酢の物やお吸い物など精進料理等に使う。出羽三山の行者が京都から伝えたという。ただ一軒で製造。(山形県)

いぶり豆腐・
燻製豆腐

固く造った豆腐を、桜の木のチップなどで燻した豆腐。燻した香りが特徴。(岩手県、長野県、愛知県、岐阜県、熊本県)

つと豆腐

豆腐を竹づと(竹すだれ)に入れ、糸巻にして締め、熱湯で加熱。保存性が良く、煮物などに用いる。(福島県)


竹づとに代え、藁づと、または菰で包み(こも豆腐)、同様の処理をしたものもある。(茨城県)

固(堅)豆腐

「豆腐を縄で縛って運んだ」といわれるほど固くつくられた豆腐で、昔は各地に在りましたが、現在は岐阜県白峯村や富山県五箇山の岩とうふ、徳島県祖谷の石豆腐、熊本県球磨地方の五木豆腐などが有名。

豆腐羹
(とうふかん)

固豆腐のように水を切り、みそやしょう油を用い低温で数時間煮込んだもの。チーズの様な味。(京都府)

豆腐かまぼこ

脱水した豆腐に魚肉を加えて固めたもの。(宮城県 他)

豆腐カステラ

豆腐の水を切り、砂糖を加えて焼いたもの。秋田県県南地方で、祝事や仏事の際に供された品。(秋田県)

豆腐ちくわ

脱水した豆腐と魚のすり身を混ぜて焼きあげたもの。ソフトで味も淡泊。(鳥取県)

栃尾揚げ

新潟県栃尾地方の油揚げ。肉厚で特大なのが有名。

呉豆腐

「呉」を葛粉や澱粉で固めたもの。(佐賀県、長崎県)

滝川豆腐

豆乳を寒天で固め、ところ天を作る天突きと呼ばれる器具で押し出した麺状のもの。(各地)

しま豆腐

木綿豆腐の一種で沖縄県の豆腐の主流。生絞りの豆乳から作られた豆腐を固豆腐のように強く押し、水晒しをしないで、温かいまま食する。1丁1kg程度と大きい。また本土の寄せ豆腐にあたるものを「ゆし豆腐」という。(沖縄県)

豆腐よう

沖縄県の特産。豆腐をある程度乾燥させ、「泡盛」と紅麹などを使って発酵させたもの。保存品で、酒の肴にも合う珍品。(沖縄県)

干し油揚

非常に薄い油揚げの生地を用いた油揚げで、水分が少なく保存性が高いもの。(愛媛県)

豆腐の味噌漬け

水を切った豆腐を長期間味噌漬けにしたもの。平家の落人の保存食ともいわれる。(熊本県)

灰干し豆腐
(しめおかべ)

布で包んだ豆腐を灰で覆い、押しをし一夜置いたもの。東京小金井の三光院の精進料理が有名。(東京都、京都府)

有色豆腐

丹羽の黒大豆を使った黒豆豆腐(兵庫県)、青大豆を使った青豆豆腐・青肌豆腐(宮城県、福島県、秋田県など)、紅麹豆腐(ピンク色の豆腐)など、いずれも最近の試み。

梅豆腐

特産の梅に着目し開発されたもの。水抜きした豆腐を梅酢に漬け置きしたチーズ状の製品。(茨城県 他)

からし豆腐

練った粉からしを豆腐で包み込んだもの。(各地)

山芋豆腐

豆乳に、すりおろした山芋を入れて固めたもの。(各地)

新製品の
試み

いろいろな試みが行われてきましたが、最近の傾向としては健康志向のものも増えております。例えば、頭が良くなるといわれる魚の油のDHA、 モロヘイヤ、カルシウム、ベーターカロチン、ハーブ、ペルラン、食物繊維のオカラ、抹茶、胡麻など、身体に良いといわれる成分のある食物等を取り込んだ豆腐など。 また、豆腐ようかん、豆腐プリン、豆腐アイス、温泉玉子風豆腐等々。

豆腐でない豆腐
卵豆腐

溶き卵に調味料を加え加熱凝固したもの。

ごま豆腐

ごま(胡麻)をすり、葛粉(または片栗粉)で固めたもの。(注:大豆を原料としたごま豆腐もあります。)

ピーナッツ豆腐・
ジーマーミ豆腐

大豆やにがりを使わず、落花生の絞り汁を芋葛(さつまいもの澱粉)で固めたもの。

くるみ豆腐

くるみを原料とする、ごま豆腐と同様の製法で作る。

杏仁豆腐

中華料理のデザートに見られる薬膳料理で、牛乳に杏子(あんず)の種の成分を入れ寒天やゼラチンで固めたもの。